マイナス20℃の冬でも順調に発酵中! 十勝・士幌町の個別型プラント

2000年代からスタートした北海道・十勝地方の排泄物(牛の糞尿)系バイオガスプラント事業。
運営方法は、農家1軒1軒がプラントを設置する「個別型」と、市町村や地域、
団体単位で設置して複数農家の家畜糞尿を処理する「集中型」の2つに大別できる。
個別型の運営で知られるのが、十勝北部の士幌町。
JAが事業主体となって酪農家の個別プラント運営を支援し、有形無形の効果を上げている。

農業ビジネスマガジンVol.11(2015年10月発売)より転載

写真/藤田 淳

2020/07/28

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富田牧場の消化液をたたえた3300kℓの貯留槽と、牧草地。表面に浮いているのは分解しきれない敷わらの麦稈などで、固液分離して乾燥させ、「戻し堆肥」としてふたたび敷料に使う方法もある。

健康的な緑色に変わった牧草地

前線の影響で厚い雲に覆われた空の下、鮮やかに映える若草色の草原が続いている。約43‌haにわたって広がる富田牧場の牧草地だ。「草の色が以前より薄く、自然な緑色になりましたね」と代表の富田博文さんが言う。

「硝酸態窒素が減って土壌が健康になったのを感じます。ただ、牛がよく食べるエサになるかどうかは牧草の善し悪しで決まる。消化液の影響がどれほどあるかは、まだ正直わかりません」

牧草の出来は収穫時の水分量が左右する。今年の初夏は晴天続きの中で収穫できたので、良いエサになるだろう。逆に去年は雨が続き、でも完全に晴れるまで待っていられず雨の止み間に収穫。あまり良いエサにならず、牛の食い付きも今ひとつだった。富田牧場のバイオガスプラントが稼働したのは2013年4月。3度目の収穫となった今年の牧草が牛好みのエサになったからといって、必ずしも消化液のおかげとは、まだ断言できない。

富田牧場では、ほかに約37‌haでデントコーンも栽培。バイオガスを取り出した後の消化液は、この計80‌ha弱の自分の圃場に、収穫後と春先や秋に散布するほか、麦稈(牛舎の敷わらに使う)と交換で小麦農家の畑に散布しにいったり、畑作農家から頼まれてスイートコーンやマメの畑に撒いてあげたりして、ほぼ使い切る。堆肥と違って速効性があるので重宝がられ、若干、不足気味なくらいだ。

「ただ、北海道は冬期間の液肥散布ができないので、その間、毎日できる消化液を春先まで溜めておくことになる。雪の降水量も加わるので貯留槽の容量がギリギリで、もう少し容量に余裕がほしかったですね」

巨大な貯留槽の容量は、約3300kℓ。途方もない大きさに思えるが、飼育頭数が約270頭(経産牛で約160頭)の富田牧場では、1日10t以上の糞尿が発生する。また搾乳施設の雑排水も発酵槽に加えているため、冬期3ヵ月間の消化液の蓄積が予想以上なのだ。

規模の大きい士幌町の酪農は給餌が省力化できるフリーストール牛舎が大半。このサイレージはバイオガスの消化液を肥料に栽培した牧草から作られている。

発酵槽の隙間で生じたバイオガスは上部に設置された容量100㎥のガスバッグへと送られる。

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