地元に支持されるブランディングから出発したAmbitious Farm(北海道江別市)の経営戦略

午前9時前。住宅街の一画が賑わってきた。
「もうお店始まった?買っても大丈夫?」「今日は何がオススメ?」
いそいそとテントの中を物色する人々の手には、マルシェのオリジナル・トートバック。
北海道江別市の株式会社Ambitious Farmが開く「ふたりのマルシェ」は、今日も活気にあふれている。

農業ビジネスベジVol.28(2020年冬号)より転載

文/長谷川みちる 写真/辻田美穂子

2020/08/03

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早朝5時からブロッコリーを収穫する代表の柏村章夫氏。昇ってくる朝日に照らされ、朝露がキラキラと光る。

Ambitious Farmの売れる野菜

32haの耕作面積で「70品目100品種」の少量多品目栽培に力を入れるAmbitious Farm。代表の柏村章夫氏(37歳)を筆頭に、30代のスタッフが会社運営を盛り上げる新進気鋭の農業生産法人だ。

生産物の販路は直販や飲食店、生活協同組合(コープさっぽろ)、JAなど多岐にわたり、なかでも自社で運営する直売所「ふたりのマルシェ」はAmbitious Farmブランドを広める“顔”になっている。
マルシェのコンセプトは「たべる人(お客様)とつくる人(生産者)の二人」。消費者と生産者が向き合い、直接交流を持てる場所の創出だ。5月から10月までの土曜日限定で、市内の住宅街でオープンする。

店頭に並ぶ野菜は一番多い時期で50〜60品目と多彩だ。ユニークな形状のロマネスコ、トレビスといった西洋野菜が買い物客や通りすがりの人の目を引く。主力商品のブロッコリーをはじめ、北海道野菜の代名詞であるトウモロコシやカボチャ。ジャガイモやニンジン、ナス、トマトは各品目に対し4〜5品種が用意されている。ダイコンやカブ、カリフラワー、キャベツなど小売店でも馴染みのある品目も揃える。

直売所「ふたりのマルシェ」は毎週土曜の朝9時から営業。朝採りの野菜を手際よく並べる。

彩りが良く多彩であること

直販・卸売共通のニーズは〈彩り〉だ。ニンジンであれば見栄えのいい「パープルスティック」や「アロマレッド」、甘みの強い「金美」など。ジャガイモは「ノーザンルビー」や「シャドークイーン」、栗風味の「インカのめざめ」といった道内の研究機関で開発されて人気となった品種を揃える。マルシェでは1個単位で購入可能で、小売店用は数種類をパッケージングしてセット販売。これまで量と安さで勝負されてきた品目に関しても、バラエティの豊富さで勝負する。

生産量がそれほど多くないためランキングからは除外されるが、マルシェで引き合いが強いのはリーキやサボイキャベツ、セロリアック(根セロリ)のような西洋野菜だ。こういった“特殊な”野菜は、取引先の飲食店のシェフから好評だった品目・品種をチョイス。食味や調理方法についてヒアリングし、それらをマルシェ利用客や他の売り先にもお勧めする。汎用性の高さやおいしさが具体的にわかれば「プロが使う野菜を使ってみたい」と興味を引くそうだ。実際にセロリアックは消費者からの反応が上々な品目。葉セロリと異なり苦味が少なく、スープやキンピラなど簡単な調理でメニューに取り入れやすいと好評だという。

同社のマルシェは東京にも進出を果たしている。日本橋・高島屋からのオファーにより2018年から2年連続、北海道物産展の生鮮部門で単独出展した。“都心の富裕層”が好むのは、意外にも1玉まるごとのカボチャ、ダイコン、トウモロコシなど。「ザ・北海道野菜」が人気だ。

「地元では調理や持ち運びが面倒だから…とそのままでは売りにくい野菜が、東京の百貨店(催事)では売れます。不思議に思って調べると、購入商品を地下駐車場まで運ぶサービスを百貨店側が提供しており、サイズや量はあまり問題にならないようです。同じ北海道野菜でも購買者の客層(年代や年収)や行動パターン(生活スタイル)、販売場所まで意識した品揃えをどれだけ準備できるかが重要だと、あらためて実感しました」

ふたりのマルシェの世界観はそのままに、初年度の気づきを生かして北海道らしい大物野菜を充実させた結果、売り上げは1日26万8000円と自社の直販売り上げ最高記録(日)を達成。開催期間中に新規取引先も獲得したという。

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