点滴灌水システムで米の生産をサステナブルに転換 国内初の大規模実証実験開始 ネタフィムジャパン

2022/07/28

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点滴灌水導入圃場(長野県東御市八重原地区)。

農業において安定して作物に水と栄養を与える精密灌水システムを扱うイスラエル発のアグリテック企業ネタフィムジャパンは、秋田県五城目町と長野県東御市の2拠点で、点滴灌水を導入した乾田での米栽培の実証実験を開始した。水と肥料の無駄を削減し、メタンガス発生を抑制するサステナブルな生産への転換を促す。


共同実証実験プロジェクト動画「米の生産をサステナブルに転換!点滴灌水による米の栽培がスタート」

この取り組みでは、日本の圃場での点滴灌水による効果を多角的に計測する。秋田県五城目町と長野県東御市の農業法人との共同プロジェクトで、日本に古くから伝わる水田文化からの転換を中心に、農作業と生産過程の課題解決を目指す。

●農業で温室効果ガス「メタンガス」が発生している

世界で発生する温室効果ガスの24%は、農林業や土地利用から発生している。農林水産省によると、日本の農業分野においては年間5001万トン発生し、そのうちメタンガスは46%と最も比率が高く、その半分以上が稲作に由来している。

慣行農業として、日本国内において多くの米は水田により栽培されている。日本の農地の54%を占める米および水田での栽培の課題として、二酸化炭素の約28倍の温室効果があるメタンガスが水田で発生している。2022年10月に農林水産省より発表された「みどりの食糧システム戦略」の中でも、メタンガス抑制への対策について言及されている。

●なぜ水田でメタンガスが発生するのか?

土壌の上に水を張ることで、土に空気が触れず、保温や雑草対策という優れた効果がある水田での栽培は日本に根付いた米の栽培文化と言える。一方で、水田の土壌の中には、空気に触れず酸素が少ない環境で、有機物が分解する際にメタンを生成する「微生物」(メタン生成菌)が存在している。つまり、水を張った環境を作ることで、メタンが生成され、稲の中にある空気の通り道「空隙(くうげき)」を伝って大気中に放出されているのだ。

●稲作でのメタンガス発生を点滴灌水が大幅に抑制する理由

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田植え後、水を落として点滴灌水システムおよび点滴チューブを設置した直後の様子。

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点滴灌水システム導入後、1ヶ月が経過した様子。乾いた田に、点滴チューブから灌水され、成長している。

点滴灌水システムでは、土壌に水を張ることなく、乾いた土壌に点滴チューブを設置して灌水することで、土が常に空気に触れてメタンガスが発生することを大幅に抑制することができる。地球環境への負荷を軽減でき、「水と肥料の有効活用」、「労力削減」など点滴チューブを使った精密管理農業ならではの効果も見込める。また、メタンガスの抑制方法として中干し期間の長期化も推奨されているが、点滴灌水は抜本的に栽培方法を転換することで、メタンガス抑制だけでなく慣行農業に潜む課題の解決も目指していく。

●水だけでなく、肥料を無駄なく有効利用できる点滴灌水

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点滴チューブの他に、詰まりを防止するフィルターや施肥装置など精密灌水に必要な装置を設置。

点滴灌水は、作物に直接必要な最小限の水と液体肥料を与えられるため、一度に大量の肥料を与え、大雨で流れてしまうなどの無駄を防ぐことができる。特に、近年のゲリラ豪雨や干ばつなどの不安定な気候では、少しずつ精密な管理によって灌水・施肥を行い、常に土壌を健康な状態に保つことが、長期にわたる甚大な被害を受けないためにより重要な条件になっている。また、高騰する肥料を無駄なく有効に利用できる。

水資源に恵まれ、伝統的に水田で米を作ってきた日本で、米に点滴灌水を導入する理由として同社は、近年の異常気象による干ばつの発生や、突然の豪雨による土壌への被害に、潜在的な課題として農業用水路の水門の開閉や調整など管理に多くの労働力が割かれていることなどを挙げる。

このような状況に対応するには、必要な時に必要最小限の水と肥料の供給を行う点滴灌水を用いて、精密な管理を施し、節制された仕組みを導入することが有効であると同社は考える。

日本国内では、施設園芸や果樹・露地栽培の作物で点滴灌水システムが導入されているが、稲作分野で水稲品種の栽培に点滴灌水を導入するのは同社として初の試みとなる。

日本の農地の半分以上を占める水田だからこそ、環境負荷を削減し、農業におけるあらゆる課題を顕在化する。同社はスローガンである「GROW MORE WITH LESS(より少ない資源で、より多くの成長を)」を、日本の農業にもたらすべく、課題解決とより良い食糧生産環境の創造へ挑戦する。

ネタフィムジャパン