超音波を用いた振動で難防除害虫の防除に成功 農研機構×ピクシーダストテクノロジーズ

2022/06/01

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農研機構とピクシーダストテクノロジーズは、作物上のタバココナジラミとワタアブラムシに超音波を用いた非接触力を与えて反応を観察。その結果、タバココナジラミとワタアブラムシが作物から離脱することを明らかにした。

農研機構 ピクシーダストテクノロジーズ 研究成果 難防除害虫 防除法

超音波集束装置を用いた害虫類の離脱試験の模式図。 (出典:農研機構プレスリリースより)

タバココナジラミとワタアブラムシは、さまざまな野菜や観葉植物、花キ類などを加害する重要害虫。幼虫、成虫ともに植物の栄養を直接吸汁するだけでなく、甘露(病原菌が好む栄養素を含む排泄物)を排泄することで、すす病を引き起こし、作物の商品価値を低下させてしまう。また、多くの植物ウイルスを媒介することでも知られている。

農研機構 ピクシーダストテクノロジーズ 研究成果 難防除害虫 防除法

写真左:タバココナジラミ成虫(左がオス、右がメス)。
写真右:ワタアブラムシの無翅成虫と幼虫。
(出典:農研機構プレスリリースより)

これらの害虫の防除には化学農薬が使用されているが、さまざまな化学農薬に対して強い耐性を示すことから、化学農薬のみに依存した防除は困難になっており、新たな防除技術が求められているところだ。

■昆虫の振動に対する感受性を利用

昆虫の多くは環境中の振動を検知する感覚器官を持っており、植物を介した振動を感知してさまざまな反応を示すことが知られている。振動に対する感受性を利用して、昆虫の行動を制御する手法が注目され始めている。

超音波を用いて非接触力を与えることのできる超音波集束装置は、イチゴやトマトの人工授粉などへの利用も検討されている。また、多くの昆虫がコミュニケーションの手段として振動の情報を用いており、振動を感知して「停止する」、「伏せる」、「歩きだす」、「足踏みする」、「飛び立つ」などの反応を示すことが知られている。そこで今回、超音波集束装置の人工授粉以外の農業上の用途として、本装置による非接触力を用いた害虫防除の可能性を検討した。

農研機構 ピクシーダストテクノロジーズ 研究成果 難防除害虫 防除法


超音波集束装置を用いて物体を非接触で振動させる様子。
(出典:農研機構プレスリリースより)

今回、両者が開発した技術は、昆虫が持つ「振動を感知して飛び立つ習性」を利用したもの。研究では、農作物の葉の上に乗せたタバココナジラミとワタアブラムシを対象に、人工授粉用の超音波集束装置を使用して、超音波による振動への反応を観察。

その結果、タバココナジラミ成虫の約60%、ワタアブラムシの有翅成虫の25%、無翅成虫の14%が葉の上から離脱したほか、「超音波による振動を1日4時間与えるとタバココナジラミの産卵数が約54%減少する」ことが判明した。

同研究により、超音波を利用した非接触力は、タバココナジラミ成虫とワタアブラムシ成虫を離脱させるだけでなく、タバココナジラミの産卵数も減少させることが明らかになった。

超音波集束装置の出力可能範囲はおよそ縦50cm、横50cm、奥行き50cm程度と狭いことから、実用化に向けて、温室内全域を移動可能な装置を開発し、離脱した害虫を粘着板や吸引機などで回収可能かどうか検討していくという。

現在、振動農業技術コンソーシアム(代表:電気通信大学)において、トマトなどの栽培施設におけるコナジラミ類防除の省力化・減農薬化を目指し、超音波による非接触力を用いた、新しい物理的防除技術の共同開発に取り組んでいるところ。今後は、タバココナジラミやワタアブラムシ以外の害虫種に対しても離脱効果を示すのか検証していく。物理的な防除技術は、化学農薬の使用量を減少させ、薬剤耐性を発達させた害虫にも利用可能であることから、SDGsの一環である「持続可能な農業生産」にも貢献するとしている。

農研機構
ピクシーダストテクノロジーズ