灰色かび病など重要病害に強いトマトを作出 多くの作物の病害発生の抑制に期待

2020/11/13

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農研機構は、イネの病害抵抗性遺伝子BSR2(ビーエスアールツー)を導入することにより、灰色かび病など4種の重要病害(灰色かび病、苗立枯病、青枯病、斑葉細菌病)に強いトマトを作出したと発表した。今後はBSR2遺伝子によって、病害に強くなる仕組みを調べ、トマトに限らずさまざまな作物に対応可能な防除方法の開発を目指す。

トマトは世界でも生産が多く、国内の産出額は2,367億円(農林水産省統計部『平成30年 生産農業所得統計』より)で、最も産出額の大きい野菜だ。しかしその一方で、灰色かび病をはじめ、多くの病害による生産量の減少が国内外で問題になっている。

トマトの灰色かび病の発生面積は2,477ヘクタールで、トマトで最重要の病害の1つ。トマトではビニールハウス等での施設栽培が広く行われているが、灰色かび病は、湿度の高い施設栽培で特に問題になっている病害。灰色かび病に対し十分な抵抗性を示すトマトは知られておらず、その対策は換気などの栽培管理や殺菌剤による防除に頼っていることから、抵抗性品種の開発や、新たな防除方法の開発が望まれている。同様にトマトの重要病害である青枯病や苗立枯病についても、十分な抵抗性を示すトマトは知られていない。

農研機構はこれまでに、理化学研究所環境資源科学研究センター、岡山県農林水産総合センター生物科学研究所との共同研究で、イネから糸状菌病の紋枯病に強くなる遺伝子BSR2を発見している。また、イネに加え、実験植物であるシロイヌナズナでも、BSR2遺伝子を強く働かせると、2種類の糸状菌病と1種類の細菌病に強くなることを報告している。

そこで今回、重要病害抵抗性トマトの開発や、新たな防除方法の開発に活かすため、イネBSR2遺伝子をトマトに導入し、その効果を調べることとなった。

今回の研究では、岡山県農林水産総合センター生物科学研究所と共同で、遺伝子組換え技術によりトマトの品種「マイクロトム」にBSR2遺伝子を導入し、植物全体で強く働かせと、導入前のトマト(原品種)と比べて、2種類の糸状菌病(灰色かび病と苗立枯病)に抵抗性を持つことを室内実験で見出した。

農研機構 4種の重要病害に強いトマトを作出

図1 BSR2 遺伝子を強く働かせたトマトの糸状菌病抵抗性
(a)BSR2遺伝子導入前のトマトでは灰色かび病菌を接種した葉で褐色の病斑が広がるが、BSR2を強く働かせたトマトの葉は鮮やかな緑色のまま。(b)播種1月後の苗に苗立枯病菌を接種した場合、BSR2遺伝子導入前のトマトに比べ、BSR2を強く働かせたトマトでは生存率が4倍以上高くなっていた。
(出典:農研機構「4種の重要病害に強いトマトを作出」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/137326.html)

さらにBSR2遺伝子を強く働かせたトマトは、青枯病と斑葉細菌病にも強くなることがわかった。なお、実験に使用した組換えトマトは原品種と比べ、植物体や果実の外観に大きな違いは認められなかった。

農研機構 4種の重要病害に強いトマトを作出

図2 BSR2 遺伝子を強く働かせたトマトの細菌病抵抗性
(a)播種1月後の苗に青枯病菌を接種した場合、BSR2遺伝子導入前のトマトに比べ、BSR2を強く働かせたトマトでは生存率が2倍以上高くなっていた。(b) 播種5週後の苗に斑葉細菌病菌を接種した場合、BSR2遺伝子導入前のトマトに比べ、BSR2を強く働かせたトマトの葉では細菌数が1/4以下に減少していた。
(出典:農研機構「4種の重要病害に強いトマトを作出」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/137326.html)

今後はBSR2遺伝子によってトマト等の植物が、複数の病害に強くなる仕組みを調べるとともに、BSR2タンパク質が生産する低分子化合物を同定し、灰色かび病等の重要病害に有効な新たな防除方法の開発を目指すことにしている。

また、これらの病害はトマト以外の多くの作物でも問題になっていることから、この化合物を利用することで、多くの作物で病害の発生抑制が可能になると、今後の研究に期待を寄せる。

農研機構「4種の重要病害に強いトマトを作出」
農研機構