高GABAトマトが「ゲノム編集農作物」第1号に

2020/12/14

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農林水産省は12月11日、ゲノム編集技術を利用した農作物の第一号となる届出を開発者から受理しホームページに公表した。

ゲノム編集作物の流通ルールとして厚生労働省が2019年10月、届出制度を設けた。ゲノム編集食品を従来の品種改良技術と同等の変化とみなし、ゲノム編集の技術や改変内容、新たなアレルギーの原因物質の有無などを届け出るだけで販売を認める方針を決定。ゲノム編集食品である表示を義務付けないことも決まっている。

農林水産省においては、開発者から事前相談を受け、生物多様性への影響や飼料としての安全に問題がないかを学識者へ意見照会を行い、問題がないことが確認された場合は、それを開発者に通知し届け出を受理するという仕組みになっている。

ゲノム編集農作物 GABA高蓄積トマト シシリアンルージュハイギャバ

ゲノム編集技術を用いて品種改良したGABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」。

受理第1号となったのは、筑波大学発ベンチャーのサナテックシードが、ゲノム編集技術を用いて品種改良したGABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」。

制度の下、12月11日に厚生労働省へゲノム編集技術応用食品としての届出を行い、また同日、農林水産省へカルタヘナ法における「遺伝子組換え生物等」に該当しない生物として情報提供書の提出及びゲノム編集飼料としての届出を行い、受理された。

GABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」は、今年のノーベル化学賞の授賞対象となった「CRISPR/Cas9(クリスパー/キャスナイン)」というゲノム編集技術によって、「GABA(ギャバ)」の蓄積量を通常の品種よりも約5~6倍高めたトマト。

GABA(ガンマ・アミノ酪酸)は、ストレス軽減や血圧上昇を抑える効果があると期待されている栄養機能性成分。トマトはもともとGABAを合成する酵素を持っているが、その酵素のブレーキをゲノム編集技術で抑えた。

販売計画についてサナテックシードは、まずは家庭菜園向けに苗を提供するとしており、インターネットからの申し込みを通じて2021年春からの提供を開始予定。生産者には2021年7~8月に種の販売を開始。トマトが店頭に並ぶのは2022年1~2月ごろになるとみられる。

また今回販売する苗、また今後市場に流通する予定の果実には、ゲノム編集技術を利用したことがわかるように、マークを付けて販売する予定。商品に関する情報を掲載しているサナテックシードのウェブサイトにアクセスできるQRコードも併せて表示する予定だ。

問い合わせ:サナテックシード(E-mail:info@sanatech-seed.com

【参照】
ゲノム編集と遺伝子組換えの違いについて

【遺伝子組換え】外から新たな遺伝子をゲノムに挿入する技術。これにより、これまで持っていなかった性質が付加される。
【ゲノム編集】外から新たに付け加えるのではなく、働きがわかっている遺伝子を狙って切断などして、変えること。遺伝子となっているDNAの特定の位置を切ると、たいていの場合には生物の本来の機能によって修復されるが、ごくたまに修復ミスが起きる。その結果、その特定の位置にある狙った遺伝子が変化して働かないようになったりするなど、機能が変わる。

従来の品種改良では、高温などの環境ストレスや放射線、化学薬剤処理によって人為的に突然変異を起こさせ、それらを交雑させている。厚生労働省はゲノム編集を使った品種改良のうち、外来遺伝子が食品に残らない場合は、自然界で起きる突然変異や従来の品種改良と区別できないことなどから、安全性審査を求めないことにした。今回のトマトはこのケースに当たる。

狙った遺伝子を効率的に改変して性質を変えるゲノム編集は、一般的に10年程度かかっていた品種改良を数年に短縮できる。2012年に「クリスパー・キャス9」という従来より優れた手法が登場し、一気に普及した。この手法の画期性が評価され、開発した米仏の2氏が今年のノーベル化学賞を受賞している。

ゲノム編集技術は、従来の品種改良に比べ、商用化までにかかる時間やコストが大幅に下がることが期待される。

サナテックシード・GABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」について
サナテックシード
厚生労働省・ゲノム編集技術応用食品等
農林水産省・情報提供書が提出された農林水産物の一覧
【参照】農林水産技術会議・ゲノム編集等の新たな育種技術(NPBT)