ハマタマボウキのゲノム解読 品種育成に貢献

2022/02/09

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かずさDNA研究所、香川県農業試験場、東北大学大学院生命科学研究科は共同で、アスパラガスに近縁の野生種である「ハマタマボウキ」のゲノムを解読した。この研究結果は、アスパラガスの種間交雑による品種育成への貢献が期待される。同研究成果は1月18日、国際学術雑誌「DNA Research」でオンライン公開された。

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砂浜海岸に自生している「ハマタマボウキ」。(出典:かずさDNA研究所)

食用アスパラガスは、市場価値も高く、狭い耕作地で栽培でき、気候の影響を受けにくいハウス栽培に適していることから、新規就農者にも取り組みやすい作物。日本にはアスパラガス近縁種が4種知られており、その中で最も注目されているのが山口県から九州北部の砂浜海岸に自生する「ハマタマボウキ」で、環境省レッドリスト絶滅危惧IB類に入る絶滅に瀕する植物。ハマタマボウキは砂浜に生息することから、耐塩性や耐乾性などのストレス耐性を持つと予想されるが、最も注目すべき形質として茎枯病抵抗性がある。

アスパラガス茎枯病はカビの一種によって引き起こされる病気で、一度発病するとその後の防除が難しくなるため、茎枯病抵抗性品種の開発が強く望まれている。しかし、食用アスパラガスには茎枯病抵抗性を有する品種がなく、茎枯病抵抗性を有し、かつ食用アスパラガスと交雑可能な「ハマタマボウキ」は、アスパラガス育種において重要な遺伝資源と位置付けられている。

「ハマタマボウキ」を用いた茎枯病抵抗性品種の育成については、香川県農業試験場と東北大学が参画する農食事業およびイノベーション創出強化研究推進事業で進められており、育成されれば茎枯病抵抗性品種としてだけでなく、近縁野生種を用いた品種として世界初となる。

今後、「ハマタマボウキ」の茎枯病抵抗性やストレス耐性などの有用形質を持ち、かつ食用野菜として価値の高いアスパラガス品種開発を加速化させるためには、「ハマタマボウキ」のゲノムを明らかにしてマーカー育種を進める必要がある(ちなみに食用アスパラガスのゲノムは東北大学が参画した国際共同研究により2017年に解読)。その基盤情報を整えるため、今回「ハマタマボウキ」のゲノム解読を進められた。

「ハマタマボウキ」のゲノムを明らかにすることは遺伝資源の利用だけでなく、絶滅危惧種の保護の面からも重要となる。それは、両種の交雑が可能ということは砂浜海岸に自生する「ハマタマボウキ」に、食用アスパラガスのゲノムが侵入する遺伝子汚染が進行する恐れがあるため。「ハマタマボウキ」のゲノム情報は、自生地付近での食用アスパラガスや種間交雑種の栽培の規制の根拠となるゲノムチェックの有効なツールとなる。

さらに、アスパラガスと「ハマタマボウキ」のゲノム解析には、生物学上の興味も含まれているとしている。アスパラガスの仲間は、進化の過程で真正双子葉類と単子葉類が分岐した直後に他の単子葉植物から(イネよりも古くに)分岐し、初期の単子葉類の状態を保持していると考えられている。そのため、単子葉類の初期進化をゲノムから探る上でも重要な位置を占めている。また、「ハマタマボウキ」とアスパラガスは雌雄異株だが、アスパラガス野生種には雌雄がわかれていない(雌雄同株)種もある。今回のゲノム解析は、雌雄性獲得の歴史や進化解明の一助となることも期待される。

かずさDNA研究所・ニュースリリース
かずさDNA研究所