新規GI登録「甲子柿」と「ルックガン ライチ」
2021/03/18
農林水産省は3月12日、「甲子柿」と「ルックガン ライチ」を新たにGI(地理的表示)登録したと発表した。これでGI登録された産品は合計で107品目(内1産品は登録削除)となった。
地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品が多く存在している。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が「地理的表示保護制度」。
ちなみに同制度は、商標権と異なり、特定の名称を使用することについて、生産者に独占的・排他的権利を与えるものではなく、地域共有の知的財産として保護するものであり、不正使用があった場合には行政が取り締まる等の特徴がある。
GIへの登録によって、専用のマークを付けることができ、ブランドを守りやすくなる。また、一般認知度が向上したり、市場価値が向上したりと産品の価値が高まることが期待される。
GIへの登録は海外産品も対象となっており、今回登録されたベトナムの「ルックガン ライチ」は、イタリアの「プロシュット ディ パルマ」に続き海外産品としては2例目となる。
今回、GI登録された2産品の概要は以下の通り。
■甲子柿(カッシガキ)

(出典:農林水産省)
岩手県では「前沢牛」、「岩手野田村荒海ホタテ」、「岩手木炭」、「二子さといも」、「浄法寺漆」に続き6例目の登録となった。
甲子柿は、渋柿の一種の小枝柿を「柿室(かきむろ)」と呼ばれる暗室に入れ、1週間ほどいぶして渋抜きしたもので、同市甲子町を中心に生産されている。完熟トマトのような赤さとゼリーのような食感、甘さが特長だ。
登録生産者団体:甲子柿の里生産組合
生産地:岩手県釜石市
特性:
甲子柿は、岩手県釜石市甲子町を中心に、伝統製法で渋抜きされた、完熟トマトのような鮮紅色をし、ゼリーのような食感が特長の柿である。渋柿を室(むろ)の中に入れ、煙で燻す燻煙脱渋法で甘くした柿は甲子柿のみで、その珍しさが評価されている。古くから釜石地方独特の秋の味として親しまれてきた伝統産品である。
地域との結び付き:
釜石市は、東北地方でも比較的温暖で、積雪による枝折れ等の被害が少なく、台風や強風、霜による被害も殆どないことから、果樹の栽培に適した環境であり、柿栽培の北限といわれている。全国的に珍しい室(むろ)で燻す燻煙脱渋法による商品は他になく、他品種柿を燻煙脱渋しても甲子柿のような色、やわらかさにはならない。渋柿の商業的な脱渋方法は炭酸ガスかアルコールを用い、果実硬度を保ったままで販売されているが、甲子柿の渋抜後の硬度は、刃物を使用せずとも皮が手で剥けるほどやわらかい。小枝柿(種無し)は、明治初期に気仙地方からもたらされて以来、生産地で栽培され続けている唯一の品種である。当時、囲炉裏の煙が上がっていく屋根裏に渋柿を並べたところ、渋が抜けて甘くなったことから、甲子柿の生産が始まった。
■ルックガン ライチ

(出典:農林水産省)
海外産品が登録されるのは、「プロシュット ディ パルマ」に続き海外産品としては2例目。
ベトナムのルックガンティエウライチ生産消費協会が生産する「ルックガンライチ」は、他のベトナムの栽培地のライチと比較して、大きく、甘みが強いライチ。1960年より商業生産されており、現在まで合計60年間、生産が続けられてきた。収穫後の剪定技術は、過去60年間、ルックガンの生産者によって一貫して適用されてきた。
2008年にベトナムで地理的表示として登録され、2020年のEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)の発効により、EUでも地理的表示として保護されている。
これまでのところ、ルックガンライチは、ベトナム全土で広く販売されており、中国、米国、ロシア、EU、日本を含む多くの国に輸出されている。冷凍全ライチの日本への輸出量は、近年は年間約5~6トン。生ライチも、現在、日本で流通している。
登録生産者団体:ルックガン ティエウライチ生産消費協会
生産地:ベトナム国バックジャン省ルックガン県のチュ町、ギアホーコミューン(現「チュ町」)、ドンコックコミューン、ビエンソンコミューン、ビエンドンコミューン、ジャップソンコミューン、ホンジャンコミューン、キエンラオコミューン、キエンタインコミューン、ミーアンコミューン、ナムズオンコミューン、フィディエンコミューン、フオンソンコミューン、クィソンコミューン、タンホアコミューン、タンラップコミューン、タンモックコミューン、タンクアンコミューン、タインハイコミューン及びツーフウコミューン
特性:
ルックガンライチは、他のベトナムの栽培地域のライチと比較して、大きく、甘みが強いライチである。品種は「ティエウ」。ルックガンライチの平均重量は、他のベトナムの栽培地域のライチよりも大きく、甘い。
地域との結び付き:
ルックガンライチの生産地域は盆地にあり、生産地域の東と南にはドントリエウ弧形が位置しており、西と北にはランソン省から続くバックソン山脈の低山が位置している。この地形により、長く乾燥した冬の低温と生長段階と成長期間に適した降水量を有し、果物の発育段階に入ると、総日照時間は他のティエウライチ栽培地域の総日照時間よりも長くなる。これにより、他のベトナムの栽培地域のライチと比較して、大きく、甘みが強いライチが生産される。収穫後、他のライチ生産地では大きな枝は剪定されず小さく細い枝のみ剪定されるのと異なり、ルックガンライチ生産地では、大きな枝を含むほぼ全ての枝が剪定されるため、ルックガンライチは強い甘味と大きな果実となる。