植物工場で飽差の変動を抑えレタスの収量アップ

2021/05/10

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東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らは、植物工場施設内の飽差(VPD)の変動をできるだけ抑えることにより、レタスの収量をアップすることに成功した。同研究成果は、Frontiers in Plant Science誌で4月11日に発表された。

植物工場は、農作物の生育に最適になるように栽培環境を制御することで、天候に左右されずに農作物を安定生産する施設。世界の食料不足や国内の農業従事者の減少、また、不安定な農作物の生産量や価格などの課題解決につながるとして注目されている。

これまで施設内で環境制御を行う際に着目されてきたのは、温度、湿度、二酸化炭素濃度などの環境要因だが、近年は飽差(VPD)制御の重要性が高まりつつある。

VPDとは、ある空気にあとどの程度の水蒸気の入る余地があるかを示す指標のこと。植物の気孔開度や蒸散速度が飽差に依存することはよく知られている。たとえば、VPDが低い(湿度が高い)と作物の蒸散が抑制されるが、逆にVPDが高すぎても(湿度が低く、空気が乾燥しても)気孔が閉鎖し、蒸散が抑制されると同時に、CO2の取り込み速度(光合成速度)が抑制されてしまい、作物成長にも悪影響が生じてしまう。

このようにVPDは、気孔開閉と光合成、および作物成長に影響を与える主要な環境要因の1つで、温室栽培では、加湿システムのオン/オフ制御や天窓の開閉によって、大きなVPD変動を引き起こすことが知られている。閉鎖型植物工場内でも、ヒートポンプのオン/オフ制御や施設内の風の循環によって、VPDが大きく変動することが知られているが、VPDの変動が植物の光合成と成長におよぼす影響については不明なままだった。

矢守准教授らは、VPD変動の程度がレタスの光合成や成長特性に及ぼす影響を解析した(図1、2)。

植物工場 飽差 VPD 光合成 東京大学

図1 VPD変動の程度がレタスの成長に及ぼす影響
2つの異なるVPD変動条件下でレタスを栽培した。1つ目はVPD変動が小さい条件で、2つ目はVPD変動が大きい条件である。生育期間を通して、2つの環境処理間のVPD平均値は一定であった。VPD処理を開始してから3週間まで毎週、地上部乾重量を解析した。VPD変動処理を開始してから3週間後には、VPD変動が小さい条件において、地上部乾重量が増加していた。

植物工場 飽差 VPD 光合成 東京大学

図2 VPD変動の程度がレタスの成長パラメータに及ぼす影響
植物の栽培条件は図1に示す通りである。VPD処理を開始してから3週間まで毎週、1個体あたりの葉の枚数と全ての葉面積を解析した。VPD変動処理を開始してから3週間後には、VPD変動が小さい条件において、1個体あたりの葉の枚数が増加し、また、一枚一枚の葉のサイズが大きかった。

その結果、VPD変動が大きいと、時間と共に気孔が閉鎖し、光合成速度の低下を引き起こし、その結果、レタス成長が抑制されることがわかった。一方、VPD変動が小さいと、一日を通して気孔開度と光合成速度は高く維持され、その結果、レタスの成長が促進することが明らかになった。

同研究成果は、植物工場および温室での作物栽培中のVPD制御の重要性を示すもので、施設栽培技術の改善により、植物工場の推進や発展に繋がることが期待される。

東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構