「フィトール」がネコブセンチュウに効果 農研機構

2021/02/16

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農研機構の生物機能利用研究部門は、葉緑体の成分であるフィトール※1が、難防除のネコブセンチュウ防除に有効であることを発見した。
※1 フィトールは、葉緑体に含まれるクロロフィルを構成する天然物質。

農研機構 ネコブセンチュウ 防除 病害虫

ネコブセンチュウ防除におけるフィトールの利用法。フィトールを施用したトマト等の作物では線虫抵抗性が高まり、ネコブセンチュウによる被害の抑制・軽減が期待される。
(出典:農研機構「葉緑体成分フィトールがネコブセンチュウ防除に有効であることを確認」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/138101.html)

トマトなどの根にフィトールを与えると、ネコブセンチュウによる被害が抑えられた。作物の線虫抵抗性を利用した新たな線虫防除剤の成分として有望としている。

土壌中に生息するネコブセンチュウなどの植物寄生性線虫は、植物の根に寄生してこぶ状の塊を作ったり腐敗させ、作物の収量や品質が低下する。

植物寄生性線虫の防除は、慣行農法では即効性があり、効果も安定しているクロルピクリン等の土壌くん蒸剤による線虫防除が主体。しかし、土壌くん蒸剤は、その殺線虫効果は作土層に限られるため、効果のおよばない深層に生存する線虫によって被害が発生することがある。また、クロルピクリンは刺激性があり使用に際して被覆が必要であることなどもあり、線虫害に有効で環境に対してより低負荷な防除技術の開発が望まれていた。

植物寄生性線虫に寄生された植物では、さまざまな代謝産物が生成、または分解されることが知られている。そのような代謝物のなかには線虫の寄生を抑える物質があると考え、ネコブセンチュウに寄生された植物根の代謝物の変動を分析し調べた。

室内実験で、実験植物のシロイヌナズナの根にフィトールを与え、ネコブセンチュウを放飼すると、対照区と比較して根への侵入数の低下を確。トマトでも同様の効果が認められた。また、根に10µMのフィトールを与えた場合、根に侵入したネコブセンチュウの数はシロイヌナズナとトマトでは1/3に低下した。

今回の実験において、フィトールを与えた植物では植物ホルモンのエチレンの放出が高まることが確認された。エチレンはネコブセンチュウに対する抵抗性を植物に誘導する働きがあることから、フィトールはネコブセンチュウに対する直接的な殺線虫活性は持たないので、根への侵入抑制効果は、生成されたエチレンを介して誘導された植物の線虫抵抗性によるものであることがわかった。

室内試験でのネコブセンチュウ防除に有効な抵抗性誘導物質が見つかったことから、今後は圃場での有効性を確認するとともに、他の重要植物寄生性線虫であるシストセンチュウやネグサレセンチュウに対する効果も検証する。さらに、農薬メーカー等の民間企業と連携して線虫防除剤の開発に繋げることを目指すとしている。

【参照】ネコブセンチュウとは
センチュウは細長い無色透明のミミズのような糸状の微生物。直径0.03mmほど、体長は0.3~1mmとごく小さいので、肉眼での確認は難しい。園芸においては、植物の根に侵入して養分を吸い取る、吸汁性害虫として扱われている。深海や地中など、地球上のあらゆる場所に生息していて、莫大な個体数が存在している。農作物に被害をもたらす有害センチュウとしては、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シストセンチュウの3種に大別できる。
ネコブセンチュウ:根の中に寄生して、養分を吸い取り、コブを作る。
ネグサレセンチュウ:根の中に寄生して、ダイコンなど可食の根部分に黒い斑点を作る。
シストセンチュウ:根の中で孵化し、成長すると根の外にでて袋状(シスト)を作り、植物の生育を妨げる。
シストセンチュウはマメ科、ジャガイモやトマトなどナス科などに被害が限定されるが、ネコブセンチュウやネグサレセンチュウはあらゆる種の作物に被害をもたらす。センチュウの被害にあった植物は、地上部分では草丈が短くなったり、葉色が退色したりする。被害が進むとしおれていき、いずれは枯死に至る。地下部分では、センチュウの種類によっては、根腐れさせたり、根をコブ状に変形させ、株全体を弱らせていく。
防除方法としては、センチュウ被害は代表的な連作障害の1つであることから、連作をせず、輪作・混作をする、クロルピクリン等の土壌くん蒸剤による防除、太陽熱土壌消毒、センチュウ対抗植物を植えるなどがある。

農研機構プレスリリース
農研機構