振動が害虫防除と栽培にダブルの効果!実用化へ

2022/02/02

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電気通信大学、森林総研、東北特殊鋼、宮城県農業・園芸総合研究所、琉球大学、神奈川県農業技術センター、兵庫県立農林水産技術総合センターの研究グループは、害虫のコナジラミ類に対して振動により防除する技術の特許を取得した。

近年、化学農薬だけに頼らない新たな害虫防除技術を用いた環境保全型農業が望まれている。多くの昆虫が振動を敏感に感じることから、振動を用いてさまざまな種類の害虫を防除できるのではないかと期待されている。これまでに同研究グループは、野菜や花木の害虫であるコナジラミ類をはじめとして、樹木、果樹、きのこの害虫(カミキリムシ類、カメムシ類、キノコバエ類)を対象として、産卵、定着等の行動の阻害や忌避をおこす振動の周波数や振幅を特定してきた。

オンシツコナジラミやタバココナジラミなどのコナジラミ類は、トマトをはじめとする野菜の重要害虫。コナジラミ類は、すす病の原因となる排泄物を出すほか、特にタバココナジラミはトマトに致命的被害を与える植物ウイルス病(トマト黄化葉巻病等)を媒介する。さらにコナジラミ類はさまざまな化学農薬に対する強い抵抗性を獲得していることから、化学農薬に頼らない新たな防除法が求められている。

一方、トマト等の野菜の栽培に際して、これまでは外来種のセイヨウオオマルハナバチを用いて、花を振動させることで受粉を促進してきた。しかし、セイヨウオオマルハナバチが特定外来生物に指定され使用が規制されたため、在来種のマルハナバチへの転換が急速に進められている。加えて、依然在来種を利用できない地域もあり、マルハナバチに代る効率的に受粉を促す方法の確立も望まれている。

■トマトで実証試験 振動で害虫の数が減少、着果促進にも効果が

害虫防除 振動で害虫防除 環境保全型農業 磁歪振動装置 振動農業技術コンソーシアム

図1 磁歪材料による振動発生装置(東北特殊鋼株式会社製)をパイプに設置したトマト栽培施設(JA全農内の展示圃場)。(出典:電気通信大学)

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図2 栽培施設内において磁歪振動装置を設置したトマト株の模式図。振動が磁歪振動装置からトマト株に伝わり、コナジラミ類に作用し、密度を低減させる。(出典:電気通信大学)

同研究グループは、宮城県のトマト栽培施設において、オンシツコナジラミに対する振動の防除効果を2018年の夏期に4週間、調査。磁歪振動装置を用いて、これまでの実験によりオンシツコナジラミの行動制御に有効であることが示された。図1のように、栽培施設内の上部のパイプに周波数ごとに異なる磁歪振動装置を設置することで、異なる周波数の振動を発生させ、パイプから垂下した金属ワイヤーにトマト植物体をつなげて、振動が伝わるようにした(図2)。

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図3 栽培施設(宮城県農業・園芸総合研究所)において振動を与えたトマト(300hz、30Hz)、および振動を与えなかったトマトの複葉あたりのオンシツコナジラミ幼虫の密度(平均値)の推移。3週では幼虫が成虫になったため減少した。(出典:電気通信大学)

トマト4株からそれぞれ2枚の複葉を選び、葉面に寄生するオンシツコナジラミの幼虫の数を計測すると、300Hzと30Hzのいずれの振動を与えた場合も、幼虫の密度は振動を与えない場合より低くなった(図3)。特に300Hzの振動を与えた場合、幼虫の密度は半数程度になった。このことから、振動を与えることでオンシツコナジラミ類の定着阻害に効果があることが判明。また、オンシツコナジラミやタバココナジラミに対する振動による害虫防除の効果は、神奈川県、兵庫県、沖縄県における試験でも確認された。

続いて2018年の冬期に、30Hzの振動が害虫防除に加えてトマトの着果を促進する効果があるかを調査。2018年夏期と同じ条件の振動を与えると、前回と同様に、オンシツコナジラミ幼虫の密度が低くまった。また、振動を与えることで、振動を与えない場合や、着果促進のためのホルモン剤を与える場合よりもさらに着果数が多くなったことから、振動による着果促進の効果も認められた。一方、草丈や茎の太さについては振動の影響はなかった。なお、害虫防除効果と着果促進効果がそれぞれ最適となるような振動の周波数や回数等の条件についてはさらなる検討が必要とのこと。

■磁歪振動装置を2023年度を目途に製品化

振動による防除と栽培技術は、化学農薬への依存からの脱却につながり、環境保全型農業の実現に貢献すると期待される。磁歪振動装置の改良やトマトに振動を伝える部材等の適合性試験を経て、2021年にはJA全農 営農・技術センターのミニトマト栽培施設内の展示圃場で関係者へ公開。現在、振動の周波数等の条件の最適化を進めている。また、宮城県のトマト生産現場(現地生産施設)では、振動を与えることで実際に害虫防除の効果があるかを調べている。

2023年度を目途に、磁歪振動装置は東北特殊鋼から製品化の予定だ。

今回共同で研究を行った研究グループと、静岡県農林技術研究所、日本工業大学等で、振動農業技術コンソーシアム(代表:電気通信大学)を設立。今後、同コンソーシアムによる活動を通じて、野菜、キノコ、果樹とこれらの害虫を対象に、振動を利用した害虫防除技術や作物等の栽培技術の実用化に向けた研究を展開していく。

電気通信大学・ニュースリリース