衛星データからハウス内の作物に対する日射量を推定

2021/02/18

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天地人 誠和 明治大学農学部 天地人コンパス 施設園芸JAXA認定の宇宙ベンチャー企業である天地人は、2020年8月に内閣府宇宙開発戦略推進事務局が公募した「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」に、衛星データからビニールハウス内の作物に対する日射量を推定する「施設園芸へ横展開を目的とした天地人コンパス機能拡張と栽培実証」が採択され、衛星データに「日射量」を追加し実証試験を開始していた。

同社が「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」に採択されたのは2年連続の2度目。1度目のプロジェクトでは、これまで蓄積された宇宙ビッグデータ(衛星データ)を分析し、作りたい作物に応じで、感染症リスク、高温障害リスク、冬季温度、最適雨量などをリスクマップ化して、最適な条件となる土地を探す独自開発の土地評価エンジン「天地人コンパス」を開発した。「天地人コンパス」は、1km2分解能で土地評価が可能であり、衛星データの広域性から、世界中の陸地について分析可能だ。

1度目のプロジェクトの中で識別された課題に対応する形で2度目となる今回のプロジェクトには、「天地人コンパス」に過去の台風経路データを用いたリスク評価、ひまわり8号を用いた雲画像から日射量を測る機能を追加した。

2度目となる今回のプロジェクトでは、施設園芸のハウス内センサーによる取得された地上環境データに人工衛星から取得した気候風土などのデータを活用し栽培に必要な日射量の分析や、病害虫発生、高温障害、冬季温度、最適雨量など様々なリスクをマップ化して、作りたい作物に応じて最適な条件となる土地を探すことができるように解析を行っていく。

実証実験には、温度や降水量の蓄積データのリスク評価や地形評価などができる「天地人コンパス」、リアルタイムでハウス内環境データ(温度、湿度、CO2、日射量)を測定して高品質な作物の栽培をサポートする誠和の測定器「プロファインダークラウド」、それぞれのシステムを活用。明大農学部野菜園芸学研究室が栽培を行い、衛星と地上のデータで作物の育成環境を観察する。

天地人 誠和 明治大学農学部 天地人コンパス 施設園芸

明大農学部野菜園芸学研究室が建設したハウス。ここで、アスパラガスの栽培を実証する。

明治大学生田キャンパスに建設したアスパラガス栽培用ビニールハウスで実証実験を2020年10月から開始しているが、この度、ビニールハウス内のデータを分析することで、 衛星データからビニールハウス内の作物に対する日射量を推定できるようになったと発表した。

■施設栽培版のアスパラガス「採りっきり栽培」の確立を目指す

今回のプロジェクトで目指しているのは施設栽培版のアスパラガス「採りっきり栽培」の確立だ。

アスパラガスは消費者から人気の高い野菜だが、栽培に手間暇がかかるため、これまで農業従事者の作業負荷が大きく栽培が難しい農作物といわれている。また、光合成によって蓄積された養分の量が収穫量に大きく影響するため十分な日射量の確保が重要とされている。

そこで明治大学農学部の研究チームは、栽培現場の問題を解決すべく、アスパラガスの新しい栽培方法として「採りっきり栽培」という栽培方法の開発に着手。収穫までに約3年かかるアスパラガスを定植して1年で収穫できるまでに短縮することに成功した。

しかし、「採りっきり栽培」は露地栽培用として開発したため、露地では気象条件により栽培場所が限られてしまう。「採りっきり栽培」を露地だけではなく、ビニールハウスでも実現できれば、日本全国でハウスを利用した「採りっきり栽培」を広く展開できる可能性がある。

天地人 誠和 明治大学農学部 天地人コンパス 施設園芸

現在栽培中のアスパラガス。施設栽培版のアスパラガス「採りっきり栽培」の確立を目指す。

現在はまだアスパラガスの栽培中であり、収穫まで完了していない。収穫を終えることで、施設園芸版のアスパラガス「採りっきり栽培」の開発の着手や、衛星データの有効性を実証していく。

今回のプロジェクトが成功し、衛星データを活用した効果的な施設園芸版のアスパラガス「採りっきり栽培」の栽培方法が確立されれば、ビニールハウスでの長期栽培しか選択肢がなかったアスパラガスをハウス栽培の輪作作物の1つにすることで、採算性の確保と生産性の向上に繋げ、生産者の所得向上に貢献できるとしている。

今後は、アスパラガス以外にも、日射量の寄与が高いトマトなどの作物で栽培実証を行う予定。この取り組みを通して、生産者の所得向上に繋がる技術を確立していくとしている。

天地人
誠和
明治大学農学部
【参照】2020年度 課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト
【参照】天地人コンパス紹介動画