「花粉媒介昆虫調査マニュアル」増補改訂版を公開

2022/03/30

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農研機構は3月28日、花粉媒介昆虫の調査法を解説した「果樹・果菜類の受粉を助ける花粉媒介昆虫調査マニュアル」の増補改訂版をウェブサイトで公開した。増補改訂版では、調査法の簡便化と昆虫写真の充実に加え、全国各地の調査事例を掲載し、より実践的なマニュアルになった。

農研機構 受粉 花粉媒介昆虫 研究成果

「果樹・果菜類の受粉を助ける花粉媒介昆虫調査マニュアル」表紙。(出典:農研機構)

受粉が必要な果樹・果菜類の栽培では、生産を安定させるために人工授粉やミツバチの巣箱が導入されている。一方、野生の花粉媒介昆虫も受粉に役立っていることが知られているが、その実態を調査するための手法は確立していなかった。農研機構は、共同研究機関とともに受粉に寄与する花粉媒介昆虫の調査手法を開発し、試験研究の支援を主たる目的とした「果樹・果菜類の受粉を助ける花粉媒介昆虫調査マニュアル」を令和2年度末に公表した。

今年度、より実践的なマニュアルに改良するために、生産者等にマニュアルに沿った調査を依頼し、使用感の聞き取りから課題を抽出するとともに、全国各地で花粉媒介昆虫の訪花回数と果樹・果菜類の結果率の関係を調査した。得られた情報に基づき、①調査法の簡便化、②花粉媒介昆虫の識別に役立つ写真の追加、③全国各地の調査事例を掲載し、マニュアルを大幅に増補・改訂した。

増補改訂版に沿った調査により、果樹4種(リンゴ、ニホンナシ、ウメ、カキ)と果菜2種(カボチャ、ニガウリ)の生産現場で花粉媒介昆虫の種類や訪花頻度を簡単に把握することができる。1回の調査に要する時間は数分から30分程度で、昆虫に関する特別な知識は必要ない。明らかになった昆虫の種類や個体数を全国各地の調査事例と比較することで、調査地における花粉媒介昆虫の豊かさを相対的に理解することができる。

専門家向けの初版とは異なり、今回の増補改訂版は平易で読みやすく、昆虫写真も多数掲載されており、生産者にも親しみやすい内容になっている。

日本の農業生産について送粉サービスを評価すると約4,700億円に相当すると試算されているが、近年の気候変動や生態系の劣化等の影響により、世界的に花粉媒介昆虫の減少が指摘されている。受粉が必要な果樹・果菜類を安定的に生産するためには、野生花粉媒介昆虫の実態を把握し、それらを有効に利用するための知見を蓄積する必要がある。また、人口授粉は労働力や経費がかかり、高齢化が進む生産者にとって経営の継続を困難にするだけでなく、生産規模拡大の障壁になっていると考えられている。

今回のマニュアルで野生の花粉媒介昆虫の訪花状況を把握することで、生産現場の実情に応じて人工授粉などの追加的措置の必要性を判断し、果樹・果菜類の栽培における省力化や低コスト化を進めることができるとしている。
●マニュアルのダウンロードはこちら

農研機構