少ない窒素肥料で高い生産性を示すコムギを開発

2021/09/03

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国際農研は、国際コムギ・トウモロコシ改良センター(CIMMYT)、バスク大学、日本大学生物資源科学部と共同で、窒素肥料の量を減らしても高い生産性を示す生物的硝化抑制(BNI)※強化コムギの開発に成功した。
※生物的硝化抑制(BNI):生物的硝化抑制(Biological Nitrification Inhibition)は、植物自身が根から物質を分泌し硝化を抑制することを指す。

BNI強化コムギは硝化を抑制しアンモニウムを効率よく活用するため、研究では、6割少ない窒素肥料でも生産性を維持することがわかっている。窒素汚染の防止と食料増産をアンモニウムの活用により両立することが期待される。

 

国際農研 BNI強化コムギ 窒素汚染防止 食糧増産 みどりの食料システム戦略

土壌中における窒素肥料の変換過程(硝化)と生物的硝化抑制(BNI)
(出典:国際農研)

開発したBNI強化コムギは、高いBNI能を持つ野生コムギ近縁種であるオオハマニンニクの属間交配により、多収品種にBNI能を付与した系統。この過程で、オオハマニンニクの持つBNI能を制御する染色体領域を特定し、交配によるBNI能の導入を可能とした。

国際農研 BNI強化コムギ 窒素汚染防止 食糧増産 みどりの食料システム戦略

BNI強化コムギ(例:BNI強化Munal)
オオハマニンニクのBNIを制御する染色体領域を、多収コムギ系統Munalに交配により導入。圃場試験において、BNI強化Munalは親系統に比べ少ない窒素でも良好に生育する。本図の低窒素環境では、親系統は窒素欠乏(葉色に黄味がある)の症状を示している。
(出典:国際農研)

また、BNI強化コムギは、土壌中のアンモニウムの硝化※を遅らせることで、土壌のアンモニウム濃度を向上させ、低窒素環境でもコムギの生産性を高めることができる。同研究は農林水産省「みどりの食料システム戦略」にも位置付けられている。
※硝化:微生物(硝化菌)がアンモニア態窒素(アンモニウム)から硝酸態窒素へと酸化する経路のこと。作物の根圏土壌の硝化速度を低く維持できれば、作物による施肥窒素の吸収は増加して窒素利用効率が向上し、結果として減肥が可能となるとともに、硝酸態窒素に起因する環境問題の解決へと繋がる。

世界の約2億2500万haものコムギ生産地域に向け、さまざまなコムギ品種にオオハマニンニク由来のBNI能を付加することで、硝化による農地からの温室効果ガス排出や水質汚染を低減し、生産性を向上させながら、地球温暖化を緩和することが期待できる。

同研究の成果は、科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of United States of America (PNAS)』オンライン版(日本時間2021年8月24日)に掲載された。

国際農研プレスリリース
国際農研