日本でも試験栽培開始!国産トリュフ栽培の可能性

キャビアやフォアグラと並ぶ世界の3大珍味「トリュフ」。
フランス料理やイタリア料理のグルメ食材として有名だが、
実は日本国内でも自生しており、
森林総合研究所が中心となって人工栽培化の研究を進めている。
使い道の難しい雑木林や狭い土地でも
大きな収益を生む新たな作目として期待がかかる。

農業ビジネスベジVol.23(2018年秋号)より転載

2021/01/04

  • facebookでシェアする
  • twitterでシェアする
  • LINEでシェアする
  • はてなブックマークでシェアする

木下晃彦

国立研究開発法人 森林研究・整備機構
森林総合研究所 九州支所
森林微生物管理研究グループ
主任研究員(学術博士)

トリュフ料理

写真左はトリュフのパスタ、写真中はトリュフのリゾット、写真右はフォワグラのトリュフ入りソース。トリュフを使うと香り豊かな贅沢な料理になる。

1 超高級グルメ食材「トリュフ」

価格は“万”の単位

トリュフは世界三大珍味の一つとして知られるキノコです。2014年のオークションで落札された白トリュフ(Tubermagnatum)はおよそ1.8㎏ で730万円の価格がつけられ、その大きさがギネスブックに登録されました。また2007年にオークションで落札された1.5㎏のトリュフは、取引史上最高額がつけられ、2700万円で落札されました。これらは話題要素としての付加価値もありますが、通常サイズのものでも、インターネットの食品販売サイトなどを見ると、1個20gの大きさで平均4万円(1グラムあたり2400円)以上の値段がつけられています。

トリュフ(あるいはそれに似たきのこ:砂漠トリュフと呼ばれるTerfeziaboudieriなど)は古代ギリシア時代の書簡にも登場していますが、その当時は、樹木や土などの滲出物とされ、キノコとは思われていなかったようです。独特な香りを放つ塊となれば、それも当然かもしれません。

トリュフの有名な産地はフランスやイタリアなど地中海沿岸域で、その周辺地域の料理へのアレンジが多く知られています。パスタやスープの上に薄くスライスして添えられたり、オムレツと和えて使われたりするなど、風味づけのための食材として用いられることが多いようです。また「トリュフ塩」や「トリュフオイル」などの加工品は、生鮮品に比べると安く入手することができますし、手軽に料理の味を引き立ててくれます。身近なところでは、スーパーやコンビニなどでポテトチップスやレトルトカレーに入っている商品も目にします。我々に馴染み深い和食でも、白身魚の刺身にトリュフをあしらったり、卵かけご飯に合わせたりして使われることもあります。

このように日本で食べられているトリュフは、すべてが輸入品です。財務省の統計によると、年間およそ15トンものトリュフが、中国、イタリア、フランス、オーストラリアなどから輸入されています(図1)。

トリュフの輸入先別の輸入量と輸入額

トリュフ

輸入量は2010~2017年にかけてはほぼ横ばいですが、この8年で取引額は6億円から約14億円に倍増しています。輸入量で最大の相手国は中国ですが、輸入額ではフランスやイタリアが主要国です。これは主にトリュフの種類の違いによる価格の違いによります。ひと口にトリュフと言っても、国内へ輸入されるトリュフはおよそ10種程度あり、種類によって価格が大幅に異なるのです。

では種類別の統計データがないため、2009年にアメリカが輸入したトリュフの種類別価格を参考に紹介しますと、10種類のトリュフが1キロあたり110から5060ドルの間で取引されています(表1)。

最も高価なトリュフは「白トリュフ」として名高いT.magnatumで、1キロあたり5060ドル、「黒トリュフ」あるいは「ペリゴールトリュフ」として知られるT.melanosporumは、1キロあたり1760ドルです。一方、中国から輸入されるトリュフはT.indicumという黒トリュフで、1キロあたり110ドルといったように、種類、産地によってトリュフの価格は大きく異なります。

トリュフはなぜ高い?

ではなぜトリュフが高価なのでしょうか。それは主に2つのことから説明できます。一つは他の食材にはない特有な香りです。もう一つの理由は安定的な収穫・生産が望めないことです。

シイタケやナメコなどの栽培キノコ類は、原木、つまり伐採した樹木やおが屑を用いた栽培法が確立されています。シイタケは木の構成成分であるリグニンやセルロースなどを分解して子実体(きのこ)を発生させており、自然界では分解菌(腐生菌)として生活しています。子実体を発生させるまでのノウハウや品種の開発、自然環境にさらされない屋内での栽培管理法など、様々な研究や技術開発の蓄積があります。

それに対してトリュフは、生きている植物から栄養の分配を受けることで生活しています。後ほど詳しく説明しますが、トリュフはヨーロッパで栽培化されてはいますが、シイタケのような菌床栽培ではありません。果樹園のように屋外で栽培されます。栽培化に成功しているトリュフは、黒トリュフのT.melanosporumやビアンケットトリュフのT.borchii、夏トリュフとして知られるT.aestivumなどですが、白トリュフのT.magnatumは未だ栽培に成功していません。

白トリュフは自生地で発生したものが採取され、そのままマーケットで流通しますので、その年の価格は自然環境の影響に大きく左右されます。日本のマツタケも豊凶の話題がニュースになりますが、それと同じです。このため、白トリュフは他の種類よりも数倍高い値段がつけられているのです。

アメリカでのトリュフの種類別の取引額

1 2 3 4