いよいよ東京都が本気になった!東京農業アカデミー 八王子研修農場

ほとんどの道府県にある農業大学校が、東京都には長らく存在しなかった(国立の農業者大学校は2008年まで東京都多摩市にあった)。
東京都の新規就農者が年を追うごとに増え、存在感を増すなか、都は今年6月、新たに研修農場をオープン。
東京で農業を始めたい人を全面的にバックアップする態勢を整えた。
農業ビジネスベジ最新号(Vol.30)は、コロナ禍の今まさに注目の高まる「都市型農業」を特集。
特集中から、開校したばかりの東京農業アカデミーの様子と研修生のコメントを紹介した記事を特別公開する。

農業ビジネスベジVol.30(2020年夏号)より転載

2020/08/19

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東京で農業を行う担い手を育てるために、東京都は今年度から、研修生に対して営農に必要な技術と知識を教える「東京農業アカデミー 八王子研修農場」を開講した。

第一期生は約20名の応募者の中から東京都在住の男性4名と女性1名が選抜され、コロナ禍で本来の開始予定の4月からずれ込んだが、6月から八王子にある研修農場で、露地野菜の栽培実習を行っている。

八王子の研修農場で農作業を学ぶ研修生たちと、指導を担当する講師たち。約1.5haの広々とした圃場には、6月の撮影時にはエダマメ、キュウリ、ジャガイモ、トマト、トウモロコシなどが作付されていた。

他道府県の農業大学校などと同様に、研修は座学と圃場での実習を組み合わせたもので、期間は2年間。研修を終えた後は全員が、東京都での独立就農をめざす。

研修内容はもちろん、都市農業が前提となる。たとえば、都市部では広大な農地を確保するのが難しいから、少量多品目での営農を視野に入れて、年間で約20品目の野菜の栽培を学ぶ。

また、住宅地と農地が近い東京都では、慣行栽培の化学合成農薬使用基準が他県よりも全体的に低く抑えられているが、その基準内での慣行栽培を実践するとともに、専用の圃場を整備して有機栽培の研修も行う予定だ。農場でとれた野菜を、直売所やマルシェなどで販売する実習もある。研修後に独立就農するための農地探しをサポートする体制も整えている。

5人の研修生のうち唯一の農業経験者である鈴木茜氏(26)は、神奈川県出身。農業高校卒業後、青果流通の仕事を経て、熊本の農業法人で働いていたが、いずれは独立就農したいという思いがあった。同法人の規模縮小で退職することになった2019年に、生産緑地の貸借による新規就農者第1号が東京で誕生したというニュースを見て、「これだ!」と直感したという。

鈴木 茜 氏(26)
以前は、熊本の農業法人で働いていました。消費者と距離が近い東京で独立就農できることを知って、ぜひやってみたいと思った。都内で生産緑地を借りて就農した先輩に続きたいです。飲食店で需要の高いハーブ類を生産しようと考えています。

前職はIT企業の営業職として働いていた武本信雄氏(50)は、家族と暮らす自宅がある多摩地区での就農を希望している。「東京は販路の選択肢が多く、消費者との距離が近いのが利点。そのメリットを生かして、トウモロコシ、トマト、エダマメなど、とれたてが美味しい野菜を、新鮮なうちにお客さんに届ける農業がしたい」と語る。

武本信雄 氏(50)
IT企業の営業職をしていましたが、このまま定年まで勤めて再雇用の心配をするよりも、本人次第で定年を気にせずに働ける農業に魅力を感じて就農を考えました。とれたてが美味しい野菜を、新鮮なうちにお客さんに届けたいです。

研修の1年目では、基本的な野菜の栽培法を一通り学ぶ。2年目には自ら作付計画を立てて栽培するほか、実際に就農希望地で借りられる農地を探すことも予定している。

農地探しは都の農業振興課や、(公財)東京都農林水産振興財団、(一社)東京都農業会議がサポート。地域のJAや近隣農家との関係構築も助け、研修生が新規就農者として地域に受け入れられるように支援する。

研修農場の農場長をつとめる小寺孝治氏は、「高齢化などで減り続ける都内の農業者を増やしたい」とアカデミーのねらいを語る。

「東京の農業は作る品目も、売り方も自由度が高く、色々な挑戦ができるのがメリット。都市部の農業には、新鮮な食物を消費者に届けるほかに、景観・環境保持や、住民の交流促進、食育への貢献など様々な役割があります。農地を持つ方からの、『自分はもう耕作できないが、農業をする人に貸したい』という相談も近年増えている。都内の農地を維持するためにも、地域に根付いて長く営農を続けられる人材を育てることをめざしています」

これから2年間の研修、がんばります!

赤塚功太郎 氏(23)
実家が練馬区で、大学卒業後に近所の農家でアルバイトをしたことが農業に興味を持ったきっかけです。まずは栽培技術をしっかり身につけたい。独立後は体験農園も実施して、地域の人が訪れてくれるような農家をめざします。

飯田 秀 氏(50)
前職はインフラ関係のSEです。現在住んでいる西東京市には農地があちこちに残っていて、その景観を守りたいというのが就農を考えた一番のきっかけ。多品目で、近隣の消費者に直接野菜を届けるような農業がしたいです。