市場内の「泉州屋ラボ」で加工し、アルコールブライン凍結機で急速凍結した果物と野菜。スムージーの材料になる。

〈冷凍〉〈健康〉〈宅配〉という3要素

そもそもの目的は果物などの廃棄をなくすことだった。ラボの新設費用や人件費は、そのための投資のつもりだったが、やがて秋山氏は冷凍ビジネス自体に大きな商機を見出すことになる。

2019年9月、冷凍事業コンサルティング会社、株式会社えだまめの代表が、自由な風貌の30代の男性を連れて秋山氏を訪ねてきた。冷凍青果でスムージーの事業を始めたいという食のスタートアップ会社の代表だった。顧客ひとり一人の体調や要望に合わせたスムージーの材料を定期的に送る定額制サービスという。度肝を抜かれたのは価格設定だ。1パック、つまりグラス1杯分で900円。あちこちで『売れるわけがない』と言われ、製造委託先に窮して泉州屋へやってきたという。

「たしかに古典的な青果の世界では〝非常識〟な価格です。でも、発想もパッケージデザインも我々とは180度違う。だからこそ可能性を感じ、面白いと思った」と秋山氏。同社が生産を引き受け、事業がスタートした。

「ところが生産量も当初から『月に1万個』という。あまりにも無謀だと思い、相談して3000個から5000個のラインで始めましたが、あっという間に1万に達してしまった」(秋山氏)。まず、11月に初回生産ラインとして既設のAラボと同規模のBラボを増設したが、増産に対応するため今年6・7月にはCラボ・Dラボを新設した。

「結局、彼らが正しかったわけです。家で手軽に作れる健康的なスムージーがヒットした要因はコロナ禍の影響も大きく、コロナ後の工夫は問われます。しかし、果物や野菜の栄養価を保つ〈冷凍〉に、〈健康〉〈宅配〉というキーワードを組み合わせたビジネスは将来性も大きい」

このスタートアップ会社が株式会社Greenspoon。定額制のパーソナルスムージー「GREENSPOON(グリーンスプーン)」が2020年3月の販売開始以来、数々のメディアに取り上げられ、4ヵ月で月間売上を3倍に伸ばした。9月初旬には泉州屋を含む複数の投資家から第三者割当増資と金融機関融資を受け、購買層拡大に乗り出している。

泉州屋の軸足はあくまでも原体(青果)の販売だが、加工を含めた青果の冷凍事業は、得意先への提案の拡大、新たな顧客の獲得を呼び込む〝健全なる投資ゾーン〟だと秋山氏は言う。

「人口が減って青果の販売チャネルは増え、市場を通じた青果流通も変わるなか、我々も同じところに留まっていてはダメ。弊社の冷凍ビジネスは小さいですが、衛生管理の細かい食品製造は小さな工場のほうが向いています。新しいモノを新しいところへという流れを創るプラスアルファとして、冷凍ビジネスの存在感はもっと大きくなると思います」

果物や野菜を洗浄殺菌し、皮むきやスライス、真空パック後に急速凍結し保存できる設備一式がラボに備わっている。衛生資材も扱うサラヤが冷凍食品製造の衛生管理を指導した。

1 2