「カッコいい」より、 生産者のキャラがにじみでるのが農の「ブランディング」です

ブルーファーム株式会社 代表取締役 早坂正年

生産物に付加価値を乗せなければ生産者は儲からない。しかし6次化で成功できるのは、ほんのひと握りだ。
農家の婿になった元バイヤーは、これではだめだと6年前、農業を元気にするデザインとブランディングの会社を始めた。
悪戦苦闘の末に周囲の信頼を勝ち得て、いまとり組むのが「食文化ブランディング」。地元の人が地元を誇れることが幸せ=元気につながると確信するからだ。

農業ビジネスベジVol.28(2020年冬号)より転載

写真/井上 健、ブルーファーム㈱

2020/07/31

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早坂正年

早坂正年氏と宮城県大崎市にあるブルーファーム株式会社の事務所。農家が立ち寄る1階のカフェは現在、リニューアルのためしばし休業中だ。

米は炊いて茶碗で売れ

大崎市岩出山は伊達政宗が一時、城を構えた土地だ。町を流れるシンボルの内川は、政宗公が造らせた人工河川。この川のおかげで地域には米を中心とした農業が栄え、全国屈指の米どころと呼ばれるようになった。現在も多くの米農家が先祖代々の田んぼで米づくりに勤しんでいる。

しかし、米が売れなくなったと言われて久しい。宮城県は「ひとめぼれ」「ササニシキ」の名産地で、近年では新銘柄「だて正夢」を大々的にプロモーションしているが、そもそも日本人にとって米は昔ほど必須の食物ではなく、銘柄による味の違いがわかる消費者も減っている。

「つくった米を米袋に入れて出荷すると、1㎏400円。けれど、その米を炊飯して茶碗によそって出せば、1杯400円いただくこともできる。食材のブランディングで生産者が幸せになれる構図が描きにくくなっている今、僕らが出した答えが『食文化ブランディング』です」と早坂正年氏が話す。

早坂氏は、この岩出山地区でデザインとブランディングを手がけるブルーファーム株式会社を経営。米農家の婿でもある。新たに2018年6月から、月1回の食文化体験プログラムをスタートした。名づけて「農ドブル」。「農家による手作りオードブル」の略で、農家の手料理をケータリングするサービスだが、ただ運ぶだけではない。大崎市内にある鳴子温泉郷の旅館へ生産者がお総菜を持ち込み、お客と交流しながらふるまうのだ。

「料理を料理として提供するには技術や味のセンスが必要だけれど、『食文化をプレゼンテーションする』なら、僕らがふだん食べているものを提供すればいい。伝統的な郷土料理より、なるべく僕らの等身大のものを食べてもらう。僕らはシュウマイもハンバーグもつくって食べます。だけど具には地元で採れたタケノコが入っていたりする」

外国由来の料理が日本の生活に入り込んで、土地の食材と混ざり合って、どういう食べ方をされているのか。現在進行形の食文化を、ありのままに表現する。

「とくに生産者は農産物を一番おいしい食べ方で食べているので、それを素直に出してもらうんです。たとえばハクサイ。最初、鍋料理にしたらお客さんの反応が鈍い。ふーんという感じ。あるお客さんが、ふと『生で食べてみたい』と言ったので、生産者が鍋料理で余った芯の部分を『ここがおいしいよ』と差し出した。そうしたら『甘い!』『おいしい!』とこちらが驚くほどの喜びようです。そうか、こういうことなのかと気づきました」

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