60歳で金融から農業に転身しトマトの新文化を切り拓く

株式会社ベジアート 代表取締役社長 古川愼一

金融業界で40年近く、第一線で戦ってきたビジネスのプロである。
日本に参入してくる外資で前例のない挑戦を続け、数字を上げてきた。
そして60歳を前にして、次なるターゲットに選んだのは日本の農業だった。
農業者の一員として、ピンチの農業との戦いが始まった。

農業ビジネスベジVol.28(2020年冬号)より転載

写真/岩田伸久

2020/08/03

  • facebookでシェアする
  • twitterでシェアする
  • LINEでシェアする
  • はてなブックマークでシェアする

古川愼一

PROFILE/1956年岐阜県生まれ。滋賀大学経済学部を卒業して野村證券入社。その後、プルデンシャル証券株式営業部長、HSBC証券日本株式営業部長、三和証券エクイティ室部長を経て、1999年フランクリン・テンプルトン投信投資顧問取締役、2010年株式会社F2CN投資顧問代表取締役社長。
2016年6月の誕生日に退職し、同月株式会社ベジアートを設立。2018年2月に平塚市土屋に太陽光型統合環境制御ハウス「ベジアート土屋トマトファクトリー」を建設し、スタッフらとともに自らもトマト栽培の第一線に立つ。

―なぜ「農業」だったのでしょうか?

日本の農業がピンチだからです。仕事柄、日本の各産業の人口動態をずっと見てきましたが、人口の減少でも一番ひどかったのが農業の世界でした。アメリカ人からは「日本の農業は死んだ。無駄な抵抗はやめて、農産物はアメリカから入れればいい」と何度も言われたものです。それで農業分野に目をつけていたんですが、あるとき日本の農業人口の年齢別構成が10年間で4割も減っていて、65・5歳以上が63・5%になってる データ(*1)を見た。

その数字を見て、これはチャンスだと直感しました。ピンチをチャンスに変えるのはビジネスのセオリーです。国の農業がピンチになっているときに農業をやることで、多少なりとも国に貢献できるのではないかとも思いました。

―農業がビジネスになるという確信はありましたか?

日本の人口がゆるやかに減っていくのに対し、農業人口の減少はその数倍のスピードで進んでいきますから、食料生産は追いつかなくなる。それをカバーできるのは、生産能力の高い次世代型の農業です。私が次世代型の施設農業をやろうと思ったのは、まさにそこにあります。

―トマトは飽和状態とも言われています。なぜトマトを?

日本のトマト摂取量が世界各国とくらべてあまりにも少ないからです。国民1人あたりのトマト年間摂取量はイタリアとロシアが27㎏、中国が31㎏、アメリカが38㎏。一番多いのはトルコの99㎏で、1日あたり300gも食べている計算になります。世界平均は18㎏ですが、日本はそれよりはるかに少ない10㎏です(*2)。

*1 2015年の概数値(2015年農林用センサス結果の概要による)
*2 参照:カゴメの「トマト大学」のホームページ掲載の「国別トマトの摂取量(2013年FAO資料より)」

1 2 3 4