土づくりを新たな次元に引き上げる 肥料メーカーが土壌断面調査に取り組む理由

断面を見て土づくり

農Bizムック「持続的農業の土づくり」より転載

文/川島礼二郎 写真/鈴木 忍 取材協力/JAぎふ

2021/12/06

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土壌診断で化学性を知る
それだけでは不十分!

土壌の性質は、物理性、化学性、生物性の三つに分けて考えることができる。物理性は、保水性・排水性や通気性、それに有効土層の深さなどを示す。化学性は、土壌ECやPHといった化学的性質のほか、化学物質の濃度で示すことができる。生物性とは、土壌中の微生物や小動物の種類・量・活性で示すことができる。農業生産の現場においては「土壌の性質といえば土壌診断」というくらい、化学性が重視されている。たしかに作物の生育には栄養が不可欠であり、それを補充する施肥を適切に実行するには、化学性の把握は欠かせない。だが本当に、それだけで十分なのだろうか?

こうした土壌の化学性に偏重した土壌診断に疑問を持ち、長年土づくりを学び啓発活動を続けているのが、「けい酸加里」で知られる肥料メーカーの開発肥料だ。本稿では、そんな開発肥料がJAと共催している講習会をレポートしつつ、土壌の物理性を知ることの重要性をお伝えしたい。

開発肥料とJAがタッグを組み
土づくりの講習会を開催

「え……こんな深いところまで根が張っていたのですか?」
「表面は乾燥していても、ある程度の深さまで行くと、十分に水分があるものなのですね!」……これらは講習会に参加して土壌断面(トップの写真)に触れた聴講者があげた驚きの声だ。聴講者は8名、全員が20歳代とおぼしき、JAぎふ所属の若手営農担当職員だ。多くの聴講者は、こうして実際の圃場の断面を見たのは初めてだという。

本講習会の主催者である開発肥料は、水稲生産者にとっては、お馴染みの肥料メーカーだろう。「けい酸加里」を40年以上にも渡り生産している老舗企業である。そんな同社が全国各地でJAと協力して講習会を開催するようになった経緯を、営業担当の福田剛次さんが教えてくれた。

「『けい酸加里』を発売してすぐ、根張りに関する調査を始めたと聞いています。ですからすでに40年以上も前のことです。肥料の有効性を確認・証明するため、各都道府県の研究所などと協力して、水稲のほか野菜類や花きや果樹、園芸作物にいたるまで、根張りの実証実験を行いました。その結果はきわめてポジティブであり、お陰様で『けい酸加里』はJA全農を通じて全国各地でご利用いただけるようになりました」

一方で、どんな肥料も万能ではない。いつ、どんな場合に「けい酸加里」を与えたら良いのかを知り、それを生産者に伝えなければ、肥料の効果を体感してもらうことはできない。そこで、根張りと、それに大きく関与する土づくりの重要性を伝えるため、JA全農の協力のもと全国各地の指導員や生産者と共に、根張りの調査や講習会を年に100カ所以上は開催しているという。

ここで「けい酸加里」について簡単に説明しておこう。「けい酸加里」は水稲で特に広く使われているが、野菜類や果樹、花きにも有効な「く溶性」の加里肥料である。く溶性とは、土壌中の有機酸や根が出す根酸などの薄い酸に溶ける性質のこと。だから持続的に効果があるうえ肥料成分の流出が少ない、という特徴がある。作物に対しては、根張りが良くなり、健全に育つから、病害抵抗性が高まる、というメリットがある。

「けい酸加里」は、石炭火力発電所から発生するフライアッシュ(微粉炭燃焼灰)に加里と苦土を組み合わせた、世界初の肥効持続型加里肥料。灰を有効活用することから、今話題の循環型農業の先駆けとも言える。
写真提供:開発肥料㈱

 

(写真左)慣行区/(写真右)けい酸加里区
トマトは健康に育ち、収量・良品率が高まる。「けい酸加里」は野菜類、果樹、花きにも同様の効果が期待できる。

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