都会の若者よ、続け! 都市農業に必須の〈コーディネーター〉

農業ビジネスベジVol.30(2020年夏号)より転載

写真/合田昌史

2020/10/16

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アルッテファーム 舩木翔平

高校時代から好きだったアート制作の腕前を、体験農園の看板づくりなどでフル活用。「日常の中のアートのほうが人の目に触れるし役立つ」

「これまでの農業は反あたりの収入を考えてきた。そうではなく、どれだけ人手や経費を減らせるかが都市農業のポイントだ」とアルッテファームの舩木翔平氏は言う。働き手も消費者も減っていくなか、都市農業には少ない労力で農地を維持できる方策こそが必要――その思いの結晶が3年前からとり組んでいる「東京いちじく」。「耕作放棄地×イチジク畑×地域の福祉施設」という組み合わせを、多くの人の手で東京の農地に広げることで、東京の農地を維持し、誰もが住みやすく農に親しめる環境をつくるという構想だ。

都市農業と地域活性化に、どっぷり関わって10年。「東京いちじく」の活動では先頭に立つ一方で、個々の事情や思いが複雑にからむ都市農地の維持を、農家の黒子に徹してサポートもする。目的は、都市農地を地域のコミュニティの場として残すこと。

「都市農地の役割は地域の公園に似ている。だから管轄は農水省より、むしろ国交省。これまでの農業の視点を離れて、生産だけではない活用をどんどん模索していかないと」

東京の農地はこの10年で1000haも失われた。舩木氏は今、これを本気で食い止めようとしている。

ナギナタガヤを使った草生栽培。7月初旬に倒伏して夏のあいだ枯れた葉が敷き藁のように地表を覆って雑草を抑制する。

耕作放棄地をイチジク畑に

草生栽培用のナギナタガヤが風にそよぎ、品種も大きさも異なるイチジクがあちこちに生えている。ここは3年前、最初に苗を植えた畑で、寒さで枯れた苗を植え換えたり、地上部が枯れた株の根元から新たに芽吹いたイチジクもある。

市街地を見渡す高台にある半反ほどの畑は、実は、雨が降るとぬかるんでトラクターが入らなくなる厄介な土地だ。

「ここは6、7年前に借りた元クリ林で、クリの木を抜いて野菜栽培を始めたけれど、水はけが悪くて数年前から作付けをあきらめていた。畑へ至る道も狭いので、手がかからず水気に強い果樹を植えたいと探して、イチジクにたどり着いたんです」

水を好むイチジクは雨の多い日本の気候に合う。また、一般の果樹は収穫まで3〜5年はかかるが、イチジクは初年から実をつけ、挿し木で簡単に増やせる。弱点は日照不足だが、日当たりさえ良ければどんどん生長する。

「ちゃんとした生産者からは怒られそうな畑(笑)。ただ、僕はイチジク農家になりたいわけじゃない。維持管理をそれほどせずに農地を維持し、いろいろな人が関われる畑をつくりたいのです」

畑に植えたイチジクは約20品種

左:もっともポピュラーな栽培種「桝井ドーフィン」。/中:日本の在来種のイチジク「蓬莱柿」(ほうらいし)。枝が強いが実の付きは今ひとつ。/右:完熟させるのが難しいが糖度が一番高いのが黒イチジク「ビオレソリエス」。

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