重量作物は無人ローバーが運ぶ時代へ一歩前進! ドローン技術を農地走行車の複数制御に転用

2020/11/10

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ドローン・ジャパンは、農業課題の解決に向けた「農業用搬送ローバー」に関する実証実験を行い、ドローンを農業分野で様々な用途に活用するためのオープンソースソフトウェア「ArduPilot」に、準天頂衛星「みちびき」のテクノロジーを加えることで、複数台の自律走行農業用搬送ローバーの高精度な制御技術を確立した。

ドローン・ジャパン 自律走行搬送ローバー

農地搬送ローバー。

同社は、国が推進するスマート農業の実現に向け、農業へのドローン活用に関する技術開発および対応する技術者育成に取り組んできた。そうした取り組みの中で、ドローンを農業の分野で様々な用途に活用するためのソフトウェアとしてオープンソースソフトウェア「ArduPilot」に注目し、そのオープンソースの特性を活かし、高度なドローンの制御を低価格で提供することを目標に技術開発を進めてきた。その技術を地上走行するローバー等の車両制御に転用すべく事業へのステップとしての実証実験を、準天頂衛星システムサービスの委託事業として実施した。

日本の就農者人口は、総就農者数の減少に加え高齢者に大きく偏り、農作業時の「重量作物の運搬」の負担が大きな農業課題として顕れている。また、「収穫・搬送用農業機械」は用途別の仕様である上、作物ごとに購入・調達することが農家の大きな負担となっており、収穫物等の重量物搬送の「自動化」「普及価格化」が急務となっている。

そこで、無人で自律走行する収穫物搬送機械を従来と比べ大幅なコスト低減を実現した普及価格帯での商品提供を目指し、オープンソース「ArduPilot」を活用したドローンの自律制御のためのソフトウェア開発技術、そして「準天頂衛星システム(みちびき)」による高精度測位技術を活用することで自律陸上走行する収穫物搬送機の試作をつくり技術実証してきた。

「準天頂衛星システム(みちびき)」による高精度測位技術に着目したのは、田畑での地上走行を想定する上では高精度な位置情報を基にした制御が求められるとしており、そこで、高精度測位を可能とする準天頂衛星システム「みちびき」に注目したとしている。
【参照】みちびきは、GPSを補完する衛星測位サービスと2つの補強サービスを提供している。衛星測位サービスはGPSと同等の誤差(誤差約10m程度)、サブメータ級測位補強サービスは誤差1~2m、センチメータ級測位補強サービスは、誤差6~12cm(静止体)、誤差12~24cm(移動体)としている。

今回の取り組みでは、農業現場での多様な用途を想定し、3種類の自律走行搬送ローバーを新たに開発。実際の利用状況を想定し、3台を自律的に同時走行させる実証実験を実施した。

ドローン・ジャパン 自律走行搬送ローバー特性の違う3種の実験車両は、①両輪の回転さで走行制御するもの、②エンジン式市販クローラーを自律化したもの、③4輪走行車でステアリング走行制御する市販ローバーを自律化したもの(写真上から①②③)。

公開実証実験では、畑作露地作物の複数台の自律ローバーによる自動搬送を事前に走路(農地~倉庫)を設定し、それに伴う自動搬送(作物や農業資材など)させ下記検証を行った。

1. 空中ドローン用フライトコントローラーの陸上への適用時の課題の整理
Ÿ  開発の容易性/操作の簡素化/総コストの低減
2. 陸上における複数機体での精緻な走行検証
Ÿ 設定コースの正確なトレースの検証/衝突防止/誤差範囲と搬送への影響の整理
3. 既存のGNSS/GPSと、みちびき(SLAS/CLAS)の比較検証
Ÿ 測位精度と実走行への課題整理/開発の容易性、操作の簡素化/エラー事例の抽出と解決のための課題整理/コスト
4. 複数機体の運用に関する技術検証
Ÿ 複数台同時自律走行/各役割に関する動作など

実証結果としては、「ArduPilot」と「みちびきSLAS/CLAS」の技術を農地走行車(圃場=土や傾斜が存在する場所)に活用することで、圃場や農地を自律走行する搬送型農業機械の開発が可能であることを確認。また、オープンソースや国が整備した測位衛星等の汎用技術の活用による実現であるため、開発に要するコストを中小農家でも導入可能な価格レベルまで低減させる効果があることを確認できた。

クローズド専用技術による新規開発する自律農業機械に比べて安価なコストでの提供が可能となれば、自動化やIT農業化の取り組みが遅れている中小規模農家にとっても導入可能な農業機械が提供できると期待される。

ここで確認された技術は、収穫・搬送分野だけではなくさまざまな農業機械への応用へのつながり、「ArduPilot」と「みちびきSLAS/CLAS」の技術活用の余地は大きいものと想定されるとした。

一方、安定的な自律化に向けて、空中とは異なる陸上走行での障害物対策、振動対策、市販ガソリンエンジン車の自律化のためのデジタル-アナログのアクチュエーターの高度化など、事業化へむけた課題も明確に確認することができたとした。

同社の「農業用搬送用ローバー」のプロジェクトは今後、2020年度に共同開発パートナー(農業機械メーカー)との商品開発開始すること、来年度に協力農家でのテスト稼働確認後、商品販売・出荷開始予定とのこと。

同社は、Open&Freeソース「ArduPilotによるソフトウェア技術」、Open&Freeな利用ができる「みちびきによる高精度測位技術」という“2つのOpen&Free”の技術を用いたローバードローンで、農業課題解決が求められる収穫物搬送の「自動化」「普及価格化」に向け、取り組んでいくとしている。

本実証実験の「動画解説」はこちら
ドローン・ジャパン
参照:みちびき(準天頂衛星システム)ウェブサイト