コムギ穂の自動検出大規模データベースを作成 東京大学、農研機構

2020/09/07

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東京大学と農研機構は、国際協力のもと、7カ国、9研究機関の研究者らと汎用性を高めた画像によるコムギ「穂」の自動検出のための大規模なデータベースを作成した。

コムギの栽培や研究現場では、単位面積あたりの穂数など、穂に関わる調査は主に目視により行ってきた。近年、そのような労力の軽減を目的に、画像解析や深層学習で自動化させる技術の開発が進められている。

しかし、既存の研究成果の多くは、それぞれの少ない実験データを対象として穂検出モデルを作成しており、異なる栽培条件、品種に対する汎用性がない。

穂の認識は、観察条件、品種の違い、生育ステージ、穂の向きなどにばらつきがあるだけでなく、風によるぼやけの可能性や、密集した個体群による重なりなど、正確な認識を阻害する要因が多数存在するため、研究分野でも難しい課題となっている。

こうした課題克服のため、発表者である郭 威東京大学大学院農学生命科学研究科付属生態調和農学機構助教、石川吾郎農研機構次世代作物開発研究センター 基盤研究領域上級研究員、長澤幸一農研機構北海道農業研究センター畑作物開発利用研究領域主任研究員は、汎用性のある穂検出モデルの作成を可能にするため、世界各国の研究者と協力することで、大規模で多様性に富み、ラベル付けされたコムギの穂画像データセット(プログラム処理されるデータの集合体)の構築を目標に開発に着手した。

画像によるコムギ穂自動検出のための大規模なデータベースを作成

圃場での画像取得には様々な方法が世界中で開発されており、手動による低コストな方法(A)、ロボット(B)、ガントリー(C)、懸垂ケーブル式(D)などがある。(出典:東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構)

結果、日本では東京大学と農研機構、フランスでは作物研究所Arvalisと国立農学研究所、カナダではサスカチュワン大学、イギリスではロザムステッド試験場、スイスでは連邦工学大学チューリッヒ校、中国では南京農業大学、オーストラリアでは連邦科学産業研究機構とクイーンズランド大学の研究者が、それぞれのコムギ栽培現場から11のデータセットを収集。

収集した画像は、撮影手段と機材が異なるため、初めにデータの整合化を行い、最終的に合計4,698枚の標準となる画像データを作成。一枚の画像当り約20~70個のコムギ穂が含まれている。

その後、コムギ穂の有無について、人間の判断が必要なところをコンピュータに提案させる新しい解析技術を用いることにより、従来よりも極めて効率良く機械学習のための学習データの選抜とコムギ穂の位置座標を収集する作業(アノテーション作業)を行うことができるようになった。

画像によるコムギ穂自動検出のための大規模なデータベースを作成

整備されたGWHDデータセットの一例。各国の担当研究機関名の略称で命名していた。(出典:東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構)

さらに、それぞれのアノテーション結果に対して、複数名による再検討および手動修正を行い、最終的に約19万のコムギ穂画像を格納したGlobal Wheat Head Detection(GWHD)データセットを構築した。

このデータセットの公開により、農業および研究現場の作物の高速・高精度な表現型解析(フェノタイピング研究)や人工知能(AI)ツールの開発が加速化することが期待される。

東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
農研機構
研究成果「画像によるコムギ穂自動検出のための大規模なデータベースを作成」